トルコ編:太陽がいっぱい
私がトルコで就職する直前、
妹のアキコがトルコに遊びに来た。
妹は職場からやっとこさ、有休を取ることができたのだ。
私とアキコは、ボドルム在住のタコ捕りの師匠宅に招かれた。
トルコの地中海の町は10月に入り、
朝晩は寒いものの、日中は日差しも強く、
まだ海で泳ぐことができる。
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(ボドルムにて 妹と私) |
運動音痴のアキコだが、ハワイで2度ほど
シュノーケリングを経験している。
師匠フィクレットにしたがい、私とアキコも
足ヒレとシュノーケルをつけて海に入る。
水深2メートルほどの浅瀬で、足ヒレとシュノーケルの練習。
泳ぎ疲れた時に有用な「立ち泳ぎ」も練習。
「自転車のように、足をこぐんだよ。」
フィクレットが指導する。
よし、これで大丈夫と、フィクレットはずんずん沖に
泳いでいく。
あとに残されたアキコと私。
すると、突然、
「お姉ちゃん!」と言って、
妹が私にしがみつく。
アキコは急におぼれ出した。
何せアキコの体重は私より重い。
しかもパニック状態で必死に私につかまってくる。
私はずぶずぶと海に沈んだ。
アキコはさらに強い力で、私にしがみつく。
私は思いきり反発して、海面から顔をザブンと出し、
「フィクレット!」
と叫ぶ。
100メートルほど沖を泳ぐ師匠は気がつかない。
苦しい。心臓がバクバク脈を打つ。
もう一度、あらん限りの声を振り絞って
「フィクレット!」
と叫ぶ。
師匠はふっと気がつき、私たちの危機を察知し、
私たちにむかって猛然と泳ぎ出す。
・・・ああ、フィクレットが助けに来てくれる。
私はブクブクと沈みながら、
必死で考えをめぐらせた。
・・・ここでアキコと私の2人がフィクレットに
つかまったら、3人ともお陀仏だ。
フィクレットが、たどり着く。
私はアキコを「えいっ」とばかり、
フィクレットに押しやった。
フィクレットはアキコを抱きかかえ、
海面に浮かばせると、自らは潜って
シュノーケリングをした。
アキコはこれで助かる。
私は、飛び出しそうな心臓の鼓動と
呼吸の苦しさを感じていた。
私は自分を救わなければならない。
・・・これではまるで、映画の「太陽がいっぱい」だ。
美しい地中海で、死の恐怖を感じるなんて。
苦しい呼吸を繰り返し、
バタ足だけの背泳ぎで、陸地のある方向を目指した。
聞こえるのは「ドッ、ドッ、ドッ、ドッ」との
心臓の激しい鼓動。激しい息。
仰ぎ見るは天空から照りつける太陽。
太陽がいっぱい。
中国編:メコン河流域への旅
中国での留学時期は、1989年に天安門事件が起きる前だった。
すでに多くの留学生が中国各地の大学で学んでいた。
彼らが楽しみにしているのは、春節(旧正月)の1か月あまりを
利用した旅行である。
私の回りも、みな旅行の計画を立てている。
大連の氷まつり、チベット、泰山・・・。
時間があるが、貧乏な学生たち。
その頃、中国では二重価格制度、すなわち2種類のお札が
流通していた。
一つは兌換券・・・これはは外国人と特権階級用。
もう1種類は人民元・・・これは一般人民用。
私たち外国人は、外貨を両替すると、兌換券を渡される。
実はこの兌換券、同じ「中国元」の単位でありながら、
人民元の 1.2 倍から 1.5 倍の価値があるのだ。
北京や上海の路地には新疆ウィグル自治区からやってきた若者が、
兌換券を買い取るヤミの取引をしていた。
渋谷のセンター街での密売のようだ。
明らかな違法行為であるが、
留学生たちは、そこで手持ちのお金を増やして
旅行の費用にあてていた。
さて、山東省の煙台(Yantai)で、新年を過ごした
マリコしゃまと私は、列車に乗り、上海に向かった。
上海で留学生仲間のグーグちゃんと合流。
グーグちゃんの弟さんが日本からやってくるので
上海の虹橋空港に出迎えに行った。
4人で旅行の計画を立てた。
目的地は、シーサンパンナ(西双版納タイ族自治州)
ミャンマー、ラオスと国境を接する、メコン川流域の村だ。
秘境には多くの少数民族が暮らしている。
ルートは上海から雲南省、昆明(Kunming)まで二泊三日、寝台列車。
昆明から飛行機とバスだ。
4人は3日間の車中を楽しむべく、上海でギターを購入。
さあ、秘境への旅へ出発だ。
列車が動き出す。上海から西へ西へ。
ギターがつまびかれる。
あれ、音程が・・・。
ギターのフレームの調整がめちゃくちゃなのだ。
グーグちゃんの歌声は、ギターにつられて調子っぱずれだ。
列車には食堂車がないため、
途中の駅で「盒饭(Hefan」と呼ばれる駅弁を購入。
3日後に昆明に到着。
広びろした町、大きな空。
広い道には街路樹が並ぶ。
黄色い装束のラマ僧が歩いている。
遠くまで来た。
昆明に2泊ほどして、いよいよシーサンパンナへ飛ぶ。
空港で4人を待っていたのは、小型のプロペラ機。
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(シーサンパンナへ向かうプロペラ機) |
右から弟さん・・・冷静で温厚な大人
かぐやとべ・・・明るく涙もろいおっちょこちょい
マリコしゃま・・・辛口だが情に厚い個性派
撮影:グーグーちゃん・・・純粋で情熱的な気分屋さん
こんなに小さな飛行機は初めてだ。
機内は20席ほど。外国人旅行者で満席だ。
出発の合図。
プロペラがゆっくり、そして段々早く回り出す。
プロペラの回転に合わせ、機体も揺れる。
そろそろと機体が前に進む。
機体もガタガタを音を立てる。
何と心許ない飛行機だろう。
滑走路にスタンバイし、
離陸に向け機体は疾走する。
プロペラの轟音。
機体が浮き上がる。
プロペラ機は空気の抵抗をまともに受け、
機体を大きくふるわせながら上昇する。
眼下にはうっそうとしたジャングルが広がる。
聞こえるのは、うなりを上げるエンジン音。
頼むから落ちないで。
もしも、このジャングルに墜落したら、
仮に一命を取り留めたとしても、虎の餌食になってしまうだろう。
このジャングルには、救出に向かう道路すらないのだから。
無事、着陸した時に出た大きなため息。
秘境では、またフリーズしてしまう出来事が・・・。
(つづく)
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今日の出来事:
自宅に帰ると刑事さんが私を待っていた。
何事だろう・・・。
近くで事件がおこったため、
周辺住民に事情聴取を行っているのだ。
刑事さんの質問に答える私。
するとそこに、けたたましく刑事さんの着メロが流れた。
おおっ懐かしのスージー・クアトロ。"Can the Can"だ。
「あ、あ、この曲知ってます!
小学校の時、シングル盤を買って聴いていました!」と私。
「ええっ、ご存知ですか!
僕はバンドで、クアトロと同じベースを
弾いていました。」
スージー・クアトロは1970年代の女性ロッカー。
事件とまったく関係のないところで
盛り上がった刑事さんと私。
・・・あぁ、驚いた。
あぁ、なつかしい。
One of my dreams:
というわけで、久々に音楽の血が騒いだが、
さすがにこの歳でロックをやったら、
「ばばぁ、ひっこめ」状態だろう。
そこで、私の積年の夢は、ジャズクラブで
しっとりとジャズを歌うこと。
まずは一曲、持ち歌をつくらなければ。
お気に入りの曲、"It's A Sin To Tell A Lie".
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